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ブリヂストン、低燃費性と高破壊強度を両立したゴム複合体を開発

2018年06月28日(木曜日)

 ブリヂストンは、内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の一つである「超薄膜化・強靭化『しなやかなタフポリマー』の実現」(伊藤耕三プログラム・マネージャー)の一環として、二つの相反する材料特性を両立させるダブルネットワークと呼ばれる構造をゴム材料で実現することに成功した。これによりゴム材料の強度を、低燃費性を意識したゴム(基準ゴム)対比約5倍に向上するとともに、従来技術では強度と二律背反の関係にあるタイヤの燃費特性に寄与する材料物性も15%向上する。

 ゴムには、破断・摩耗・引裂きなど多岐にわたる強度特性があるが、き裂の発生とその成長(き裂進展)を抑制することで、これらの強度特性を向上させることができると考えられている。本ImPACTプログラムにおいては、同社が培ってきたゴム材料に関する技術や知見を基盤に、多くのアカデミアによるき裂進展現象についてのミクロ・マクロスケールでの実験的解析、理論シミュレーション、新材料の具現化に関する先進的な研究との連携を通じて、ゴム材料の高強度化のメカニズムを明らかにするとともに、その具現化を進めてきた。

 その中で、今回の成果は、ダブルネットワークと呼ばれる構造を用いたことにより達成されたもの。ダブルネットワーク構造は、本ImPACTプログラムに参加の北海道大学 龔剣萍教授がタフポリマー化の手法として提唱してきた原理であり、ゲル材料などにおいて、劇的な強靱化の効果が実証されていたが、これまでゴム材料に適用された例はなかった。本ImPACTプログラムにおいて、このダブルネットワーク構造をゴム材料に取り入れることで、従来技術では二律背反の関係にあるとされていた、タイヤの燃費特性に寄与する材料物性と耐き裂進展性を高次で両立することに成功した。その結果、従来の低燃費性を意識したゴム(基準ゴム)に対して、タイヤの燃費性能に寄与する材料物性を15%向上するとともに、き裂進展に対する強度を約5倍に向上したゴム複合体を実現した。

ダブルネットワーク構造を取り入れたゴム複合体の概念図および製造プロセス
ダブルネットワーク構造を取り入れたゴム複合体の概念図および製造プロセス

 同社では、2016年に本ImPACTプログラムにおいて、タイヤの燃費特性に寄与する材料物性を維持したまま、従来二律背反の関係にある強度を約4倍向上するゴム材料を開発した。今回は、当時のゴム複合体と比較して、さらに強度を向上させるとともにタイヤの燃費特性に寄与する材料物性も向上し、強度を3.5倍以上に向上すると同時にタイヤの燃費特性に寄与する材料物性を10%向上させるという本ImPACTプログラムの開発目標を達成した。

開発したゴムの強度・燃費特性の位置づけ
開発したゴムの強度・燃費特性の位置づけ

 現在、上記の新規ゴム材料を用いたタイヤの試作・評価を行っており、2020年代前半の実用化を目指している。

<伊藤 耕三プログラム・マネージャーのコメント>

伊藤耕三氏

 本研究チームでは、「タイヤ薄ゲージ化プロジェクト」において、タイヤを構成する各種部材を強靭化し薄くすることで、タイヤの省資源化および軽量化、並びに低燃費性能の向上を目指している。これまで、き裂進展挙動の本質を明らかにすることで、ゴム材料における高速き裂進展を大幅に抑制する高強度化を達成した。今回、北海道大学がタフポリマー化の手法として提唱するダブルネットワーク構造をゴム材料に導入することにより、さらなる高強度化とともに、従来トレードオフの関係にあった低燃費性能の向上との両立に成功した。これは、ゴム材料においてもダブルネットワーク構造がタフポリマー化に有効であることを実証するとともに、タイヤとしての実用化を目指す上でも極めて重要な成果と言える。今後は、開発したゴム材料を用いたタイヤの試作・評価が順調に進展し、早期の実用化が達成されることを期待している。