東北大と防衛大、AI技術を活用した超高速の三次元高分解能観察技術を開発

2018年05月30日(水曜日)

 東北大学 多元物質科学研究所(IMRAM)の陣内浩司教授、樋口剛志助教と防衛大学校の萩田克美講師は共同で、従来の集束イオンビーム‐走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)による三次元ナノ計測の分解能と計測時間を、最新のディープラーニング(DL)等の人工知能(AI)技術を用いて高解像度化・高速化する計測技術の試作に成功した。ポリマー中に分散させたシリカ粒子の三次元凝集構造の2nmの解像度での計測を実現し、さらに、非対称低解像度計測を模擬したデータに対するDL超解像処理の試験において、試作した計測手法を実証した。本技術により、実用上の解像度を確保しつつ計測時間を短縮するハイスループット化や、高解像度化が可能となる。 今回の実例に限らず様々なソフトマター複合材料に展開可能で、今後、DLなどのAIを用いた材料開発の一つとして期待されるという。

 今回の研究成果によって、従来困難であったソフトマターの高分解能三次元構造観察と三次元構造データ取得の超高速化が可能となる。条件にもよるが、同程度の分解能の三次元データを1/10程度の時間で観察することが可能となることが期待できる。

 このような大量のデータを生成する電子顕微鏡技術へのディープラーニングの活用は、本研究で対象としたソフトマターの研究のみならず、広範な材料における材料開発や検査工程などの広い産業応用で期待できる。

 ポリマー系材料については、クライオ電顕技術の本技術への応用などにより、さらなる高分解能化・高速化も期待でき、このように先進的計測技術は、東北大学が研究開発機関として参画している革新的研究開発プログラム(ImPACT)の伊藤プログラムで取り扱われる「しなやかなタフポリマー」の実現にも大きく資することと期待できる。今後、東北大学は、本技術を応用した先端三次元電子顕微鏡の開発を日立ハイテクノロジーズと共同で進め、次世代電子顕微鏡技術の発展に取り組む予定。

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AI技術を活用した超高速の三次元高分解能観察技術